沈没艦船の遺骨収集
「海没遺骨は収容困難」という前提そのものに、技術で挑みます。
- 沈没した艦船
- 約3,000隻 先の大戦で海に沈みました。
- 海底に眠る御遺骨
- 約30万柱 未収容の約112万柱のうち、最も大きな塊です。
- 空気潜水の限界水深
- 40m これより深い作業には飽和潜水が必要になります。
- 当協会の開発目標
- 500m 耐圧500mの海中ドローンを開発します。
国の基本的な考え方
厚生労働省社会・援護局は令和2年8月、沈没した艦船の遺骨収集について基本的な考え方を取りまとめました。 そこでは、技術面・安全面の制約があることから、観光ダイバー等の目に触れるなど 遺骨の尊厳が損なわれている場合に、検討を行ったうえで可能な範囲で収容するとされています。 あわせて今後の新たな取組として、遺骨を目にする可能性のある事業者との連携を進め、 積極的に情報収集を行う方針が示されました。
| 技術面・安全面 | 空気潜水で潜れるのは水深40mまでです。それ以深の潜水作業には、国際的基準に従った飽和潜水が最も安全とされます。 |
|---|---|
| 潜水関係者の実態 | 一般的な活動深度は水深30〜40mまでです。沈没艦船の内部など閉鎖された空間は危険なため、基本的に潜ることはありません。 |
| 主な海域 | 中部太平洋地域 ── チューク(トラック)、パラオ、ラバウル、ソロモンなどが中心です。 |
| ご遺族等のお考え | 海そのものが墓場であるという考え方がある一方、観光ダイバーなどの目に御遺骨が晒される場合には収集を望む声があります。 |
出典:厚生労働省 社会・援護局「沈没した艦船の遺骨収集についての基本的な考え方」(令和2年8月3日)
DNAの残存性から見た、海没遺骨の再評価
海没遺骨は、身元特定の可能性が最も長く残された御遺骨でもあります。
陸上の御遺骨
- 日本人戦没者が眠る地の多くは、酸性土壌です。
- 酸性土壌では、およそ80〜100年でDNAが崩壊するとされます。
- 戦後80年を超えた現在、陸上の御遺骨は身元特定の限界に差しかかっています。
海中の御遺骨
- 陸上と直接比較したデータは存在しません。
- 低温であり、紫外線が届かない環境です。
- この条件下では、陸上より長くDNA細胞を維持できると考えられます。
事業上の含意
「海没遺骨は収容困難」という整理は、収容の難易度だけを見た評価です。 ここに「身元特定の可能性」という軸を加えると、海中はむしろ最後に残された可能性の場となります。 陸上で時間切れが迫るからこそ、当協会は海中に取り組みます。
※DNAの残存年数は土壌・水温・埋没状況に大きく左右されます。海中の優位性は現時点では当協会の作業仮説であり、 比較データの取得自体を研究課題と位置づけています。
海中ドローンによる遺骨収集
無人機であれば、「安全面の制約」という前提そのものを外すことができます。
開発目標
既存の海中ドローンの耐圧限度は、およそ水深200m前後です。 当協会は耐圧500mまでの機体を、マジックハンド(マニピュレータ)と併せて開発します。 御遺骨と遺留品を損なわずに回収し、出土状況を記録できることを要件とします。
- 40m空気潜水で潜れる限界水深
- 200m既存の海中ドローンの耐圧限度
- 500m当協会の開発目標
開発ステップ
要件定義
鑑定に耐える回収方法と記録方式を、法医人類学の専門家と共同で仕様化します。
試作機の製作
耐圧500m・マニピュレータ搭載機を製作し、陸上の水槽で検証します。
実海域試験
中部太平洋の沈没艦船海域で、実機による探査・回収試験を行います。
国への提案
技術面・安全面の制約の再評価を、実証データをもって求めます。
技術協力をお願いしたい方々へ
水中ロボティクス、耐圧筐体設計、水中音響・画像処理、マニピュレータ制御に知見をお持ちの企業・研究機関の皆さまからのご連絡をお待ちしています。 また、中部太平洋でダイビング事業に携わる方からの海域情報もお寄せください。